2012年8月12日日曜日

なでしこジャパンの強さの秘密とは

連日オリンピックの観戦で、寝不足の方も多いと思います。メダルに向けて真剣に取り組んでいる選手の姿や、メダルを獲得した選手を見て、毎日感動をもらっています。個人的にはサッカーに注目していましたが、なでしこジャパン、銀メダルでしたね!男子は惜しくもメダルを逃してしまいましたがよく健闘したと思います。

なでしこジャパンは、2011 FIFA女子ワールドカップで優勝、オリンピックで銀メダルと、チームとしてとても成長し、強くなりました。練習や試合中の選手の様子を見ていると、選手達は明るく伸び伸びと、楽しそうにプレーをしています。また、試合後にほとんどの選手は、「最高の仲間と戦えて誇りに思う」、「このメンバーと戦えて幸せです」とコメントしていて、チームとしても雰囲気は良く、お互いに信頼し合い、プレーをしていることが伝わってきます。

なでしこジャパンはなぜ、ここまで強くなれたのでしょうか?

なでしこジャパンの強さの理由として、戦略・戦術や、フォーメーション、技術などいろいろあると思いますが、チームワークやリーダーシップという観点で、なでしこジャパンの強さの秘密を考えていきたいと思います。

なでしこジャパンの強さの理由は、以下3点あると思います。

1. 仲間を思いやり共感する
佐々木監督は、著書の「なでしこ力」の中で、なでしこジャパンの強みは、「仲間を思いやり共感する心」と言っています。辞書で調べたところ、「思いやる」とは、「他人の身の上や心情を推し量って、同情する。また、配慮する。」という意味です。また、辞書で「共感」するとは、「他人の意見や感情などにそのとおりだと感じること。また、その気持ち。」という意味です。チームメンバーのことを思いやり、自分事として共感し合うことで、お互いの課題に対して助け合い、落ち込んだ時には励まし合うことで、チームとしてお互いに力を高めていったのではないかと思います。

また「思いやる」には、「遠く隔たっている人や物事を思う。思いをはせる。」という意味もあります。オリンピック代表として試合に出られているのは、自分や自分達の力だけでなく、オリンピックに出たくても選ばれなかったすべての選手、スタッフの方々、応援してくれている方々、家族などお世話になった方々がいたからという思いを共有できたからこそ、チームとして一丸になって戦えたのではないでしょうか。
オリンピック初戦であるカナダとの試合開始直前のロッカールームで、キャプテンである宮間選手は、「ここに立てるのは選ばれた18人だけ。大切な思いや大切な人たちがいて、私たちは戦っている。ここからの6試合、お互いのために戦おう」とメンバーにメッセージを送りました。佐々木監督、チームメンバーは、宮間選手の言葉を聞いて、強く心を動かされて、みんなのために金メダルを絶対に取るという気持ちが強く働いたのではないでしょうか。


2. 自分らしさを最大限に発揮する
佐々木監督は、コーチを語源である「馬車(人をある地点まで送り届ける)」としたら、選手は「乗客」であると言っています。選手は「馬」で、ムチで叩いて目標に向かわせるのではなく、「乗客」である選手を目標の地点まで送りとどけることとのことです。そのために、コーチとして、「選手の力を引き出す」ことが重要であるとのことです。

佐々木監督は、前述の「なでしこ力」の中で、選手達に対して以下を意識して行っていると書いています。

・自ら考えさせる
サッカーの試合は、いったん試合が始まったら、監督ができることはあまりありません。試合のなかで、選手達自身が一つひとつ判断してプレーをする必要があります。佐々木監督は、監督が簡単に指示をしてしまったら、選手達の判断は絶対に身に付かないと言っています。監督は勝たせなければ、教えなければという想いが強くなり、型に当てはめてしまいがちだとのことです。規則や指示で選手を管理するのではなく、自ら考えさせ判断をさせることが重要とのことです。

・強みを活かす
佐々木監督は、選手の強みを活かし伸ばすことを意識して行っているとのことです。選手の強みを見抜き、本人にその強みが武器になることを伝え、強みを伸ばす。そして、適材適所で強みが活かせるポジションを与えるようにしています。なぜなら、本人がサッカーをもっとうまくなりたいと思うからこそ努力をし、強みを活かせる場を与えられたことで成長するからとのこと。選手の弱みを指摘することだけでは、本人は成長しないし、チームの力も成長しないとのこと。また、難しいことでも、「無理だ」と最初から諦めるのではなく、「まずはやってみる」ことを伝え、相手を信じ、「必ずできる」と伝えているとのことです。

・自分らしさを表現させる
佐々木監督の指導理念は、「選手に自分らしさを表現させる」とのことです。そのために、選手の前では、身構えず常に心を開き、等身大の一人の人間として振舞っているとのことです。自分らしさを表現できる、何でも言いやすい雰囲気づくりをするためとのこと。自らの感性や個性を大事にして伸び伸びと表現してもらうことで、自ら誇りと自信を持ったプレーができるとのことです。佐々木監督はインタビューでは、冗談をよく言っていましたが、「笑い」を大事にしていて、練習や、ハーフタイムの時に冗談を言って笑わせています。これにより、選手達はリラックスして、自分らしさを出せるようになると思います。

3. 楽しむ
試合では、キックオフ直前に、選手達が円陣を組んでいる時や、各ポジションに走っている時に、選手達の笑顔がとても印象的でした。緊張していてプレッシャーがあると思いますが、自然と笑顔が出ている姿を見て、楽しんでいることがとても伝わってきました。佐々木監督は、選手が楽しくサッカーができるように、何ができるかを考えているとのことです。練習では厳しいようですが、試合では、練習してきたことも大事だが、一番大事なのは「好きなサッカーを思う存分楽しむこと」と伝えているようです。ロッカーのホワイトボードには、細かい戦術ではなく、「楽しむ」と書いていたこともあったようです。

なでしこジャパンから、仕事で強いチームになるために、学ぶことがたくさんあると思います。

最後に、女性を部下に持つ方にとって、とても参考になる話がこの本に紹介されていたのでご紹介します。女性は、男以上に細かい点に気づきや、人に対する気持ちに敏感であり、仲間意識を重要視するとのことです。身だしなみに関しては、仕事でどんなに良い意見を伝えたとしても、鼻毛が出ていたことで、信頼と尊敬が減ってしまうとのことです。また、無表情であったり、すこしイライラすることだけで、女性は敏感に反応して委縮してしまったりするそうです。男性社員は女性社員に接する時には気をつけていきたいですね。

2012年8月5日日曜日

楽天の三木谷さんに学ぶ「成功のコンセプト」とは

三木谷浩史さんの「成功のコンセプト」という本を読みました。三木谷さんは、ご存じの通り楽天をたった2人で創業して、インターネットモール「楽天市場」を日本国内で最大級に成長させました。また、最近では今年の7月19日に発売された電子書籍リーダー「kobo Touch」が話題になっています。「成功のコンセプト」では、三木谷さんがビジネスを行う上で、重要だと考える5つのコンセプトを紹介しています。5つのコンセプトは、「常に改善、常に前進」、「Professionalismの徹底」、「仮説→実行→検証→仕組化」、「顧客満足の最大化」、「スピード!!スピード!!スピード!!」です。すべてのコンセプトはとても参考になりますが、この本を読んで、私が特に印象に残った2点をご紹介します。

◆改善は凡人が天才になる方法
三木谷さんは、凡人が少しずつでも日々改善を続けていけば天才になれると言っています。改善は誰でもでき、毎日たった1%の改善をするだけでも、1年続ければ37倍になる(1.01の365乗)。そして、改善をするためには、明確な目標を立て、絶対に目標を達成するとういう意識を持つことが重要とのことです。この本では、目標に対する2つの姿勢を紹介しています。それは、「Best effort basis」と、「Get things done」という姿勢です。「Best effort basis」は、目標に達成しなくてもがんばったから良いとして言い訳をする姿勢です。「Get things done」は、あらゆる手段を使って何としても目標を達成しようとする姿勢です。目標を明確に設定し、「Get things done」の姿勢で取り組むからこそ、真剣に改善ポイントは何かを考え、日々改善を実践し、目標を達成することができるのだと思います。

◆当事者意識を持つ
三木谷さんは、社員に当事者意識を持ってもらうことが重要であると言っています。経営者として、社員に当事者意識を持ってもらうために、楽天を自分の「家」と考えてもらい、社員に対して様々な取り組みを行っています。例えば、楽天では掃除は外部の会社に依頼するのではなく、自分達の手で掃除をしています。そのことにより、仕事場を自分の「家」と思い、同僚を「家族」と思う意識につながり、当事者意識を持つことができるとのことです。楽天は、ここ数年で急速に海外展開もしていますが、買収した企業に対しても、自分達の手で掃除を行うようにしています。また、日本で行っている「名札の着用」も社員に義務付けています。国、人種や価値観が異なったとしても、楽天が重要視している価値観を共有して、楽天という「家」に所属する一員として、当事者意識を高めることを徹底的に行っています。

私は「成功のコンセプト」を読んで、楽天はしっかりとしたコンセプトを持ち、社員が徹底的にそれを意識して実践できているからこそ、急成長をすることができたのだと実感しました。コンセプトは、当たり前の事で、誰もが意識し実践することができることです。しかし、社員が日々徹底して実践することはとても難しいと思いました。コンセプトを社員が意識して実践できるようになるために、会社を「家」と捉え、当事者意識を持つことができる取り組みは、とても素晴らしいと思いました。私も、日々の行動を見直し、当たり前のことかもしれませんができていないことを、徹底的に実践していきたいと思いました。

2012年7月29日日曜日

あなたはどんなことに心を動かされますか?


リーダーとして、社員が主体的に行動してくれないと悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
人が納得して行動するためには、どのようなことが必要なのでしょうか?

今回のブログでは、この疑問に答える一つの考え方として、ハーバードビジネススクールの人気教授であるジョン・コッターが書いた「ジョン・コッターの企業変革ノート」で書かれている考え方をご紹介します。

この本では、組織変革で重要な考え方を、複数の成功事例を用いて紹介しています。コッターは、組織を変革するためには、戦略・組織構造・制度を変えるだけでなく、「社員の行動」を変えることが肝であると言っています。そして社員の行動を変えるためには、理屈だけではなく、「心や感情」に訴えて、問題点や解決策に気づいてもらうほうが効果的であると言っています。「分析し、考えて、変化する」流れよりも、「見て、感じて、変化する」流れのほうが強力であるとのこと。

「見る」:事実を具体的に、5感など心に訴えかけるように伝える。反発されないために、感情的にならず冷静に事実を伝える。
「感じる」:心が動かされ、行動を妨げる感情が抑えられて、変革を促進する感情が高まる。
「変化する」:感情が高まることにより、行動が変化する。

この本で紹介されているある製造会社の事例を紹介します。その製造会社は、コスト削減のために購買プロセスを大幅に見直す取り組みをしようと考えました。まずは、事実を確認するために、工場で何種類の手袋を購入して、費用はいくらかかっているのかを調査しました。調査の結果では、工場で購入している手袋は424種類もあったとのことです。手袋は工場ごとに発注先が異なり、価格交渉も個別に行っている。同じ手袋であるのに、ある工場では5ドル、別の工場では17ドルで購入していたという状態であったとのこと。手袋の問題は一例であって、会社全体で購買プロセスに関して大きな問題になっていたことがこの調査からわかりました。そこで社員に問題点を意識してもらうために行ったことは、すべての手袋424種類を集めて、それぞれの手袋に価格と工場名を書いたタグをつけ、役員室のテーブルに並べました。まずは各部門のトップを役員室に招いて見てもらいました。どの幹部も否定できない事実を「見て」、いかに非効率でコストを意識していないかを「感じる」ことにより、心が動かされ、「変わる」ことの必要性を実感したとのこと。また、現場の工場へもこの手袋が順次持ちこまれ多くの従業員の目に触れることで変革への意識が高まり、購買プロセスの変革につながったとのことです。

また、この本以外の事例として、韓国のサムスンの例をご紹介します。サムスンでは、1993年の夏に製造した携帯電話の25%が不良品であることが発覚しました。そこで、サムスンは製品の品質を社員に意識させるために、販売しようとしていた携帯電話の在庫15万機すべてを回収して運動場に高く積んだそうです。社員が運動場に集められると、社員の目の前で不良品に火をつけてすべて焼いてしまったとのことです。社員は自分達が苦労してつくった携帯が焼かれている光景を見て、涙を流していたとのことです。不良品を出してしまうことで、すべての在庫を回収して破棄しなければいけないという事実を具体的に「見せ」、「感じる」ことによって危機感を持たせ、「変わる」ためのきっかけになったのだと思います。その後、サムスンの携帯電話は主力事業になり、今のスマートフォンの好調な売上にもつながったのかもしれません。

以上、人が納得して行動するための考え方の一つをご紹介しました。リーダーとして、戦略など理屈を社員に伝えることは重要なのは言うまでもないことです。ただし、理屈だけでは人を動かすのは難しいのではないでしょうか。当たり前のことだと思いますが、この本を読み、人は「理屈」で納得するだけでなく、「感情」が動かされた時にはじめて行動を変えるのだと実感しました。この考え方は、人に納得してもらい行動してもらうことが必要なビジネスの世界では、リーダーだけでなく誰もが参考になると思います。

2012年7月22日日曜日

オフィスの整理整頓・清掃はできていますか?

整理整頓や清掃とビジネスの成果は関連があるのでしょうか?


お恥ずかしい話ですが、以前私は、会社の机の上に多くの関係ない書類で埋もれた状態で仕事をしていました。また、書類も整理されていない状態で、必要な書類を探すだけで一苦労でした。また、オフィスが汚れていても気にしていませんでした。しかし、現在は意識して、毎日帰る際は机の上をきれいにし、物が何も置いていない状態にしています。仕事中も、必要なものを最低限出し、書類もその場で整理するようにしています。また、オフィスの掃除やごみ捨ても意識して行い、なるべく社員全員で行うようにしています。あたり前のことだと思いますが、整理整頓や清掃をすることで、書類をすぐに探すことができ、仕事の効率も上がります。何よりも机やオフィスがきれいなことで、気持ち良く仕事ができると感じています。

みなさんはよくご存じだと思いますが、整理整頓や清掃に関しては、職場環境の維持改善で用いられるスローガンとして「5S活動」があります。「5S活動」の意味は以下です。(Wikipediaより)
・整理(せいり、Seiri):いらないものを捨てる
・整頓(せいとん、Seiton):決められた物を決められた場所に置き、いつでも取り出せる状態にしておく
・清掃(せいそう、Seisou):常に掃除をして、職場を清潔に保つ
・清潔(せいけつ、Seiketsu):3S(上の整理・整頓・清掃)を維持する
・躾(しつけ、Shitsuke):決められたルール・手順を正しく守る習慣をつける

5S活動を徹底的に行ってビジネスの成果を出している有名な企業としては、日本電産という精密小型モータや機器装置の製造・開発・販売を行っている会社があります。精密小型モーターの開発・製造では、世界一のシェアを誇っています。また、M&Aも積極的に行い、業績不振の会社を買収した際も、社員を削減せずに数多くの企業を再生させてきたことでも知られています。創業者で代表の永守さんは、業績不振の企業を再建するために最も重要なのは、 「6S・3Q」であると言っています。6Sとは、5Sに「作法」を加えたもので、これを実践すると、3Q「Quality Worker(良い社員)」、 「Quality Company(良い会社)」、 「Quality Products(良い製品)」につながると言っています。6S活動の評価は月に2度行い、書類を30秒以内に探し出す、引き出しを開けて整理されているか確認する、工場の床に油がこぼれていないか確認するなど多くの項目をチェックして、職場ごとに点数化しているとのことです。永守さんは、「仕事にどんな意識で取り組んでいるかが6Sに象徴的に現れる。再建したどの企業も、6Sの点数の向上と比例して業績が好転した。」と言っています。6S活動を徹底することを通じて社員の意識変革をして、徹底的に無駄を省いて効率化することで、業績不振の会社を再生できているのだと思います。

私は以前、整理整頓や清掃などはビジネスの成果に関連は直接ないと思っていました。しかしながら、整理整頓や清掃など基本的なことがとても重要で、ビジネスの成果にも結び付くと思います。机の上やオフィスは社員や会社を映し出す鏡です。「当たり前のことを当たり前に行うこと」が徹底できていないことにより、効率的、かつ確実に仕事をすることができなくなってしまうと思います。また、整理整頓や清掃は、外部の会社に任せるのではなく、社員全員で行っていくことが良いと思います。当事者意識を持ち、お互いに協力し合うことで、会社や仕事に対しても、より責任感を持つことができるのではないでしょうか。常に、整理整頓をし、働きやすく気持ちの良いオフィスになるように心がけて行動していきたいと思いました。


2012年7月16日月曜日

エンゲージメントとは(会社と個人の関係性について考える)

みなさんは「エンゲージメント」という言葉を聞いたことはありますか?人材育成や組織開発の分野で、会社と個人の関係性を表す言葉として、数年前から良くこの言葉を聞くようになりました。英語の辞書で「engagement」の定義を調べてみたところ、「婚約、結婚の約束」という意味でした。会社と個人を「婚約」にたとえて、お互いにパートナーとして高め合い、未来を築いていくことが求められてきているのかもしれません。

エンゲージメントの定義は様々あります。以下に、いくつかご紹介します。
・「組織(会社)」と「個人(社員・構成員)」が一体となって、双方の成長に貢献しあう関係(HUMAN VALUE)
・社員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」を表すものと解釈されますが、より踏み込んだ考え方としては、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」のことをいいます。(日本の人事部)
・この会社にいれば、自分のありたい姿に向かって成長できる。しかも、自己実現のための努力が会社のビジョン実現にも貢献できると思う社員が多い状態(日経情報ストラテジー)

最近エンゲージメントが注目されてきた背景としては、
・社員の仕事に対する考え方が変化してきて、仕事に対して金銭的な報酬だけではなく、仕事を通して自己実現ややりがい、社会貢献の意識を持つ社員が増加してきている。
・雇用形態や価値観の多様化により、仕事に対してやりがいを持って働いてもらうために、より個人一人ひとりに合わせた対応の必要性が高まってきている。
・人材の流動化が進み、社員はより自分に適した場に転職してしまう傾向にある。
などが考えられると思います。

アメリカに調査機関でギャラップ社という、エンゲージメントの調査で有名な会社があります。300万人の社員、20万人のマネジャーの分析を行った結果、組織のパフォーマンスに最も影響を及ばしているのは「エンゲージメント」であるという研究報告を出しています。個人にとって、報酬や福利厚生などに対する満足度などよりも、自己実現による成長が企業のパフォーマンスに強く関係しているとのことです。そして、エンゲージメントを高めるためには、現場のマネジャーが重要な役割を担っているとのことです。リッツ・カールトンという顧客サービスで他のホテルから一目置かれている有名なホテルは、このギャラップ社のエンゲージメントサーベイを活用しているそうです。社員のやる気を高めることで、顧客サービスを高めることに取り組んでいます。

ギャラップ社によると、エンゲージメントの状態は、以下の12の質問項目を社員にアンケート調査することによって測定できるとのことです。

1. 私は仕事の上で、自分が何を期待されているかが分かっている 
2. 私は自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている 
3. 私は仕事をする上で、自分の最も得意とすることを行う機会を毎日持っている 
4. 最近1週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした 
5. 上司または職場の誰かは、自分を一人の人間として気遣ってくれている 
6. 仕事上で、自分の成長を励ましてくれる人がいる 
7. 仕事上で、自分の意見が考慮されているように思われる 
8. 自分の会社の使命/目標は、自分の仕事を重要なものと感じさせてくれる 
9. 自分の同僚は、質の高い仕事をすることに専念している 
10. 仕事上で、誰か最高の友人と呼べる人がいる 
11. この半年の間に、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた 
12. 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った


みなさんの会社のエンゲージメントの状態はどうでしょうか?

強い組織にするためには、このエンゲージメントという考え方は非常に参考になると思います。
会社としては、方向性を明確にし、社員一人ひとりが仕事で何を実現したいのかを理解し、社員の自己実現を最大限にサポートすること、そして、個人としては、目標を明確にし、会社を通して自己実現に取り組んでいくことが重要だと思います。


実際の夫婦でも、お互いに高め合って成長し合える「エンゲージメント」が高い関係性にしたいものです。


2012年7月8日日曜日

星野佳路さんに学ぶ社員のやる気を引き出す考え方とは


今回のブログでは、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」から、星野佳路さんの社員のやる気を引き出す考え方についてご紹介します。ご存じの方も多いと思いますが、星野佳路さんは、星野リゾートというリゾートホテルの運営をしている会社を経営しています。事業としては、経営不振に陥ったホテルの再建もしています。星野さんは、山梨県のリゾナーレや、北海道のアルファリゾート・トマム(現、星野リゾート トマム)など数多くのホテルの再建を成功させ有名になりました。私が星野さんを知ったのは、5年ほど前にリゾナーレで宿泊の研修を数多く行っていたことがきっかけでした。かつてリゾナーレは、負債総額が147億円あり、廃業寸前だったそうですが、星野さんが3年間でリゾナーレを再建をさせたとの話を聞き、どのように行ったのか、とても関心を持っていました。
星野さんは、再建の鍵は、「うつむきがちな社員のやる気をどのように引き出すか」だと言っています。これから職場がどうなるのか分からず、不安な気持ちを抱えた社員のやる気を、星野さんはどのように引き出していったのでしょうか?

◆「任せれば、人は楽しみ、動き出す」
星野さんは、31才の時に、父が経営していたホテルを継ぎました。その時にはアメリカで学んだホテル経営学を駆使して、詳細な接客マニュアルを作成しました。そして、マニュアル通りの行動を社員に求めるなど、トップダウンで指示をするやり方を行ったとのことです。しかし、ベテラン社員が反発して、1/3の社員が辞めてしまったとのことです。その時に、どのようにしたら社員が辞めずに働いてくれるのかが経営の最重要課題になり、悩んだとのことです。その経験から、「任せれば、人は楽しみ、動き出す」ことに気づいたとのことです。
まず、星野さんは再建をする際に、社員に「経営者が主役ではなく、みなさんが主役である」と伝えるそうです。そして、社員に仕事を任せ、最終的な意思決定は社員がするようにしているとのことです。自分達が決めた結論だからこそ、やる気になってがんばるようになるとのことです。組織構造もフラットにして、仕事ごとに10人程度のユニットをつくり、責任者を立候補制にして、やる気がある人にリーダーになってもらう仕組みにしているそうです。

◆社員の共感を得る
星野さんは、再建をする際に、ホテルのコンセプト(誰に対して、何を提供するのか、自分達の強みは何か)を、市場調査やデータ分析・整理を通して、社員と徹底的に考えるそうです。コンセプトを決める際に、星野さんが最も重要にしているのは、「共感」とのことです。コンセプトは、正解はないため、正しいものではなく、社員に最も共感してもらえるもので決めることが重要だと言っています。社員が、どんなリゾート施設にしたいのか、自分は何になりたいのか共感でき、自分がやるべきことをイメージできることで、自分のホテルに対してプライドを持つことができ、自ら動くようになるとのことです。
星野さんは、理想のリーダーについては、「行き先、ビジョンを示し、共感を得る力を持っている人」と言っています。これから社員にどのような素晴らしいことがあるのかを伝え、強制的ではなく、自らやりたいと思ってもらうことが重要とのことです。

星野さんは、「社員を信じる」ことがホテルを再生するために一番重要だと言っています。社員は、基本的にお客様に楽しんでもらいたい、喜んでもらいたいと思っている。そこを信じることができれば、社員信じ、任せることができるとのことです。私は、現実的に、リーダーが「社員を信じる」ことは、社員が誤った意思決定や行動をとってしまうリスクがあり、難しいのではないかとも思いました。しかし、「社員を信じ」、共感できるコンセプトを共有し、仕事を任せることでやる気を出し、自ら動き出す社員が育つと感じました。星野さんの考え方は、リーダーとして参考になることも多いと思います。

2012年7月1日日曜日

稲盛さんから学ぶ社員の意識改革とは

先週の6/28(木)にカンブリア宮殿というTV東京の番組で、稲盛 和夫さんが出演されていました。みなさんもご存じの通り、稲盛さんは、2010年から経営破たんをしたJALの再建に取り組み、わずか2年で業績を回復させました。JALは、今年再上場を申請しています。
再建を引き受けた直後、稲盛さんは、JALの社員について、
・高学歴で頭は良いが官僚的でプライドが高い
・お客様を大事にする、誠実に一生懸命仕事をするなど、人として大切な意識が足りない
・倒産したという事実すら認識が薄い
と言っていました。
このような難しい状態のJAL社員の意識を、稲盛さんは、どのように変えたのでしょうか?アメーバ経営で有名な「部門別採算制度」を導入したことにより、コスト意識と責任感を持たせたことも意識改革に大きな影響を与えたと思いますが、それ以外はどのようなことを行ったのでしょうか?

◆人間としての道徳観の浸透(リーダー教育)
稲盛さんは、まず幹部に対して、1ヵ月間(18回、1回3時間)、リーダー教育を実施したそうです。そこで行った内容は、人間として最低限必要な道徳観を繰り返し伝えたそうです。一見すると、内容は極めて当たり前のことでしたので、最初、JALの幹部の反応は、子供でも分かることをなぜ学ぶ必要があるのかと、反発していた人が多かったそうです。ただし、稲盛さんはリーダー教育のなかで、繰り返しあきらめずに伝えていったそうです。すると、頭では分かっていたが実践できていなかったのではないか、実践できていなかったことが倒産につながったのではないかと思う人が出てきたそうです。そして、リーダー教育で学んだことを自分のメンバーにも伝えたいと考える人が増え、現場にも浸透させていったそうです。現場に浸透させていく時は、現場の方(例えばキャビンアテンダント)は純情な方が多かったので、リーダー教育の内容の良さを実感して納得する人も多く、一気に社内のムードが良くなったとのことです。現在は、リーダー教育での学びを元に、自分達でJALとしての考え方・価値観をまとめた「JALフィロソフィー」を策定して、フィロソフィーが書かれた手帳を全社員に配布し、教育も自分達で行っているとのことです。
私は、この番組を見て、人間性とビジネスはとても深く関係性があると感じました。お客様のことを考え、誠実に・謙虚な気持ちで仕事をすることは、当たり前かもしれませんが、意識して実践することが大切だと思います。稲盛さんは、社員の意識を変えていくために、まずは道徳観を通して人間性を徹底的に繰り返し伝え、人として、仕事として何が大事なのか、どうしていきたいのか考えさせたのだと思います。「JALフィロソフィー」のなかで、自戒を込めて、「常に謙虚に素直な心で」を意識して仕事を行っていきたいと思いました。

◆経営方針・目的
稲盛さんは、会社の経営に関して、トップの一部だけではうまくいかず、全社員の心をつかみ、社員と気持ちを一緒にして協力してもらうことが必要だと言っています。そのために、経営の方針・目的については、「全従業員の物心両面の幸せ」を第一に考えているとのことです。そのことにより社員も一生懸命協力してくれるとのことです。

JALのホームページで企業理念として稲盛さんは、
「公明正大で、大義名分のある高い目的を掲げ、これを全社員で共有することで、目的に向かって全社員が一体感をもって力を合わせていくことができると考えています。
JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、お客様に最高のサービスを提供します。
一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。」
と書かれています。

私は、このような経営方針・目的を明確にJALの社員に打ち出すことで、今後会社の方向性が分からなく不安ななか、社員は経営陣に対して安心感と信頼を寄せ、自ら意識を変え行動できたのではないかと思いました。そして、社員がJALを好きになり、JALで働いていることに誇りを持つことにより、お客様に最高のサービスを提供できるようになるのだと思います。

以上、番組を見て、社員の意識を変えていくためには、会社としての価値観や方針を明確にして、全社員に繰り返し伝え、共有していくことが重要だと感じました。その際には、一方的に伝えるのではなく、社員の信頼と納得を得て、自ら考えて行動ができるように伝えていくことが大切だと思いました。次回飛行機に乗る機会があれば、JALのサービスを体感してみたいと思いました。